「ドクター・コッペリウス」鑑賞記。

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11月12日の土曜日。

僕は家族と共に楽器の修理の依頼をしに御茶ノ水に寄ってから渋谷にあるBunkamuraオーチャードホールへ向かった。

話は横に逸れるが、僕はBunkamuraオーチャードホールへは過去に坂本龍一のピアノコンサートツアーで一度行ったことがある。もちろん演目は坂本龍一自身の楽曲をピアノアレンジしたもの、もしくは初めからピアノ楽曲として作曲されたものに終始していたため、あくまでもアコースティックな構成(厳密に言うと曲によってはMIDIピアノの自動演奏との連弾、というのもあったが)の内容であった。

そういった会場で初音ミクが歌って踊る、ということを想像しただけでもかなり胸熱な心境ではあったが、事前情報で得た話だと、演目のうちに入っている「惑星」のLive Dub MixではOn-U-Soundの創設者であるエイドリアン・シャーウッドが手がけるそうで、まるでYMOの再生ライブのオープニング・アクトを務めたThe Orbのアレックス・パターソンの様な展開になったら面白いな、と思いつつ会場に向かったのであった。

※蛇足だが、エイドリアン・シャーウッド/On-U-SoundはYMOを始め末期のアルファ・レコードのコンテンツのリミックスシングルなどを立て続けに出していた時期もあった。

 

で、会場に到着すると入口付近にはすでに多くの観客が今か今かと開場の時刻を待っていた。

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(写真は開場直後のオーチャードホール入口)

 

そして入口に入ると、

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ドクター・コッペリウスの「祝・開催」と書かれたポスターと協賛企業・団体の一覧が飾れられていた。

そして少し先に設置されていたグッズ販売はすでに階段上がって一階席のところまで列ができており、とりあえず、プログラムとTOMITAロゴのTシャツと手塚プロとのコラボによる初音ミクTシャツを購入。またその反対側にあったCD販売所では「イーハトーヴ交響曲」と「惑星 ULTIMATE EDITION」のCDを購入。

 

まぁ、そんなこんなでグッズを買い漁り自分の席に向かったのだが、3階席だったため移動するだけでもかなりの運動になり、着いた頃にはばててしまったことは言うまでもない(笑)。

 

そうしているうちに開演の時間となり、第1部の1曲目「イーハトーヴ交響曲」の演奏が始まる。

残念ながら僕は初演を生で見ることができなかったため、メインの「ドクター・コッペリウス」同様楽しみにしていたのだけど、やっぱり配信やテレビ越しで聴くそれとは違い、少年少女たちのコーラスが澄んで聴こえ、またミクのソロも若干こもってはいるもののオケのテンポと上手くリンクができていて、技術の進歩って凄いなぁ、と改めて思ったり。

また、テーマにしている宮沢賢治の世界を冨田先生なりに解釈したそのサウンドは決して重苦しいものではなく、童話や詩の世界をオーケストラとコーラスで上手く合わさっていたところが個人的には素晴らしいと感じた。

 

で、「イーハトーヴ交響曲」が終わり、数分の舞台転換があった後にエイドリアン・シャーウッドによる「惑星」のLive Dub Mixが始まる。

エイドリアンが操作するOn-Uサウンドシステムを中心に4人の弦楽器奏者と一人のパーカッション奏者による「演奏」は冨田オリジナルの「惑星」をさらに攻撃的に、そして時折見せるダブサウンドで幻想的に奏でることで、主にクラシックを演奏するホールが「クラブ」空間になってしまったのがある意味面白い。おそらく、今後このような演奏はオーチャードホールで聴くことはないだろうな、と思うと、ある意味貴重な瞬間に立ち会っているんだなぁ、と思う。

 

そんな特異的なステージが終わり20分間の休憩を挟んだ後は本日のメインである「ドクター・コッペリウス」である。

冨田先生が残された素材から作られたとされる第0楽章から音の嵐でホールが包み込まれる、という表現が正しいのかどうかはわからないけれども、少なくとも「イーハトーヴ交響曲」で体験した音の広がりとは明らかに違う、創られた音響がシンセサイザー音楽に慣れている僕にとってはなかなか心地よい空間であった。また、この曲では「バレエダンサー」としても活躍するミクは人間のバレエダンサーと息のあったところを見せ、もう彼女はやろうと思えば何でもできてしまいそうな勢いにまで来てるんじゃないかと思ったり。

しかしもっと凄いのはいわゆる「バレエ組曲」的な視覚的要素もありながら、オーケストラという生楽器とシンセサイザーをひとつの音響空間に混ぜ合わせたというのは「オーケストラ」「シンセサイザー」「サラウンド」と言った冨田先生のライフワークの集大成的なものをこの「ドクター・コッペリウス」で感じることができたと思っている。

ただ残念なのはこの曲の第1楽章と第2楽章が未完成であるため、この世界初演では「欠番扱い」となってしまっていることだろうか。もちろん、それらが欠けていても楽曲の持つ目的は果たしているのだが、もし、このまま欠番扱いするつもりでないのなら、是非これらのピースを埋めて欲しいな、と思っている。それがたとえプログラムに記載されていうような「答えのない質問」だとしても。

 

終演後、配布されていたチラシには早速来年4月にすみだトリフォニーホールにて再演が決まっているとの情報が記載されており、様々な事情で今回聴きに来れなかった方は是非とも冨田先生が残された「音響の洪水」を体験して欲しい、と僕は思っている。

それ位この「ドクター・コッペリウス」は冨田勲先生の最後にして最高の傑作と評していいと思う。そしてその作品にミクが関わることができたことについても、長年のボカロファンとしてミクのファンとして嬉しいことである。

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